【放置すると罰金100万円!】特定金属くず買受業の届出とは?


はじめに
令和8年(2026年)6月1日、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(金属盗対策法)」に基づく特定金属くず買受業の届出制度がスタートしました。
銅くずを扱うすべての事業者が対象となり、届出を怠ると懲役・罰金の刑事罰が科される可能性があります。すでに金属くず商や古物商として営業されている方も、この新しい届出義務が別途発生しています。
「うちは古物商の許可を持っているから大丈夫」「大阪府の金属くず営業条例の許可があるから問題ない」と思っていたとしたら、それは大きな誤解です。
この記事では、行政書士の視点から手続きの全体像をわかりやすく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、自社の対応状況を確認してください。
■ なぜこの法律ができたのか
近年、太陽光発電設備の銅線ケーブルや電力インフラから金属を盗む「金属盗」が社会問題となっています。警察庁の統計によれば、令和6年の金属盗の認知件数は令和2年比で約4倍の20,701件に達し、被害額は年間約140億円(窃盗全体の約2割)にのぼります。盗難された設備は復旧までに長期間を要するため、電力供給停止などの経済的損失はさらに深刻です。
こうした状況を受けて制定されたのが金属盗対策法です。盗まれた金属が買い取られ転売されるルートを断ち切ることで、金属盗犯罪そのものを抑止することが目的です。
法律は大きく3つの柱で構成されています。
- ① 特定金属くず買受業の届出制度(令和8年6月1日施行)← 今回のテーマ
- ② ケーブルカッター等の犯行用具規制(令和7年9月1日施行済)
- ③ 盗難防止に関する情報の周知(令和7年9月1日施行済)
■ 「特定金属くず」とは何か
法律上、特定金属くずとは、主として銅(特定金属)で構成された金属くずのことです。銅が主成分のスクラップ類が対象となります。具体的には「切断された銅線ケーブル」「破壊されたエアコン室外機の銅部品」などが典型例です。
ここで重要なのが、古物と特定金属くずの区別です。同じ金属製品でも、その状態によって適用される法律が変わります。
- 本来の用法で使用可能なもの(通常の室外機、電線など)→ 古物営業法の対象
- 本来の用法で使用不可のもの(破壊された室外機、切断された銅線など)→ 金属盗対策法・条例の対象(=特定金属くず)
すでに古物商許可をお持ちの方であっても、「本来の用法で使用できない」状態の銅くずを買い受けている場合は、今回の届出が別途必要になります。
■ 誰が届出をしなければならないのか
特定金属(銅を主とする)くずの買受けを業として行うすべての者が届出の対象です。業種の名称にかかわらず、実態として銅くずを仕入れ・買い取りしているのであれば届出義務が発生します。
対象となる可能性がある事業者の例は以下のとおりです。
- 金属くず商(大阪府金属くず営業条例の許可業者を含む)
- 古物商(金属類扱い)
- 解体業者・電気工事業者で銅くずの買受けを行っている方
- 太陽光パネルのリサイクル事業者
- その他、銅くずを仕入れる製造業者等
特に注意が必要なのは、大阪府金属くず営業条例の許可業者の方です。
条例に基づく許可(従来の許可)を持っていても、今回の金属盗対策法に基づく届出は別途必要です。条例の許可があるからといって、法律上の届出義務が免除されるわけではありません。
■ 届出の期限はいつか
届出の期限は、すでに営業しているか否かによって異なります。
【新規に営業を始める方】 令和8年6月1日以降に営業を開始する場合は、営業開始の前日までに届出を完了させる必要があります。届出なしで営業を開始することは認められません。
【令和8年6月1日時点ですでに営業中の方(既存業者)】 令和8年8月31日までが猶予期間です。ただし、相手方の本人確認義務や記録作成義務は令和8年6月1日から即日発生しています。届出の猶予があっても、義務そのものは施行日からスタートしている点に十分ご注意ください。
■ 届出に必要な書類と手続きの流れ
届出は営業所ごとに、当該営業所を管轄する警察署長を経由して都道府県公安委員会に行います。
必要書類
届出書(営業開始届出書・規則別記様式第1号)に加え、以下の書類を準備します。
- 営業所および特定金属くず保管場所それぞれの平面図と周囲の略図
- 個人の場合:住民票の写し(本籍記載のもの)
- 法人の場合:定款・登記事項証明書・代表者の住民票の写し(本籍記載のもの)
届出書には、氏名または名称・住所・法人の場合は代表者氏名・営業所の所在地・保管場所の所在地などを記載します。
大阪府内に複数の営業所がある場合の特例
大阪府内に複数の営業所がある場合、同時に届出する場合に限り、いずれかの営業所を管轄する警察署に一括して届出することが可能です。ただし、他府県の営業所の届出は大阪では受理されません。他府県に営業所がある場合は、各府県で別途届出が必要です。
変更・廃止の届出
届出事項に変更があった場合や廃業する場合は、事由発生から14日以内(登記事項証明書の添付が必要な場合は20日以内)に届出が必要です。なお、**営業所を移転する場合は「変更届」ではなく「廃止届+新規開始届」**の扱いになります。変更届で対応できると思い込んでいると手続き漏れになりますので注意が必要です。
■ 届出後に必要な4つの義務
届出を行えばそれで終わりではありません。届出後も日常的に守るべき義務が4つあります。
義務①:相手方の本人確認
特定金属くずを買い受ける際には、毎回、相手方の本人確認が義務付けられています。
- 個人との取引(対面):運転免許証・マイナンバーカードなど顔写真付きの本人確認書類の提示を受ける
- 法人との取引:取引担当者の本人確認(顔写真付き身分証)に加え、登記事項証明書等による法人確認も必要
- 2回目以降の取引で口座振込による支払いの場合:同一人であることを確認できれば本人確認書類の提示を省略可
義務②:相手確認記録・取引記録の作成・保存(3年間)
買受けのたびに記録を作成し、3年間保存する義務があります。取引記録には以下の事項を記載します。
- 買受け相手方の氏名または名称
- 買受けの日付・時刻
- 買い受けた特定金属くずの量・特徴(種類、写真撮影による記録も可)
- 買い受けた価額
- 代金の支払方法(現金・振込等)および口座情報
義務③:表示義務
届出後は、各営業所の公衆が見やすい場所に、氏名または名称・届出をした公安委員会の名称・届出番号を明瞭に表示しなければなりません。古物営業法の標識のような決まった様式はなく、16ポイント以上の文字で記載すれば問題ありません。
また、自社のウェブサイトを持っている場合(常時使用する従業者が6人以上等)は、ウェブサイトのトップページ等の目立つ箇所にも表示する義務があります。
義務④:警察官への申告義務
買受けた特定金属くずが盗品に由来する疑いがあると認めたときは、速やかに警察官に申告しなければなりません。疑いを感じた場合に申告を怠ることも、義務違反となります。
■ 罰則一覧:無届けは最大100万円の罰金+懲役
違反内容に応じて、以下の刑事罰が設けられています。
| 違反内容 | 刑事罰 |
|---|---|
| 無届け営業 | 6ヶ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または両方(法人にも両罰適用) |
| 名義貸し | 6ヶ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または両方 |
| 営業停止命令違反 | 1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、または両方 |
| 虚偽届出・変更廃止届出怠り | 30万円以下の罰金 |
| 報告義務違反・立入検査妨害 | 30万円以下の罰金 |
さらに、刑事罰だけでなく指示処分・営業停止命令などの行政処分が同時に科せられる場合もあります。事業の継続に直結するリスクがある点を、改めてご認識ください。
■ 大阪府金属くず営業条例との関係(大阪府の事業者の方へ)
大阪府では従来より「大阪府金属くず営業条例」に基づく許可制度があります。今回の金属盗対策法とはまったく別の制度であり、銅くずを扱う業者は両方の義務を同時に果たす必要があります。
ただし、それぞれ別々の記録を作成する必要はありません。法律の記録に以下の項目を追記することで、条例の帳簿作成義務も同時に満たしたことになります。
- 相手確認記録に「職業」を追記(条例の要件)
- 取引記録に「売却時の払出日時・売却先の氏名・住所」を追記(条例の要件)
また、法律の記録保存期間は3年(条例は1年)ですので、法律に合わせて3年保存すれば条例の義務もクリアできます。二重管理の手間を最小限に抑えながら、両方の義務を効率よく果たすことが可能です。
金属盗対策法と大阪府金属くず営業条例の対比
| 金属盗対策法 | 大阪府金属くず営業条例 | ||
|---|---|---|---|
| 申請・届出 | 届出(営業開始前日までに届出) (注意)右記条例の許可取得者もいわゆる「銅」くずを買受ける場合、届出の対象となる(無届は、無届営業となる) | 申請(審査あり) (注意)標準処理期間40日 (注意)左記届出者が、許可取得前にいわゆる「銅」くずを買受けた場合、無許可営業となる | |
| 申請・届出先 | 原則「営業所の所在地を管轄する警察署」 (注意)大阪府内に複数の営業所を有し、同時に届出する場合に限り、いずれかの営業所を管轄する警察署において受理可能(他府県の営業所は受理できない) | 原則「主たる営業所」 (注意)営業所の名称及び所在地並びに、管理者の氏名、住所等の変更については、当該変更に係る営業所を管轄する警察署において受理可能 | |
| 行商 | なし(自宅を営業所とする) | あり(届出人住居地を管轄する警察署又は大阪に住居を有しない場合は主たる行商地域を管轄する警察署に届出) | |
| 対象金属 | 銅(青銅、真鍮含む) | 金属全般(銅、鉄、アルミ、亜鉛、ジェラルミンなど) | |
| 許可証 | なし(届出番号の通知のみ) | あり | |
| 相 手 確 認 | 身分証明書 | 顔写真付に限定 運転免許証、個人番号カード など | 顔写真付に限定されない |
| 法人の場合 | 取引担当者の本人特定事項(住所、氏名、年齢) に加えて 登記事項証明書又は印鑑登録証明書等の提示又は送付等による相手方(法人)確認 | 取引担当者の本人特定事項を確認 (住所、氏名、年齢、職業) | |
| 免除 | 2度目以降の取引、かつ、当該代金の支払をその者の口座に振込む場合(相手確認記録に載っている者)又は買受業者が自ら特定金属(銅)くずを輸入する場合 | 一度確認した者(帳簿に記載がある者) | |
| 売 買 記 録 | 保存期間 | 3年 | 1年 |
| 種類 | 1 相手確認記録相手確認した担当者記録作成者本人特定事項 個人 住所、氏名、年齢 法人 法人名称、本店等の所在地相手確認方法本人確認書類の提示を受けた日など (注意)条例に比べ記載項目が多い 2 取引記録(買取時のみ)相手方の氏名又は名称取引日時、金属くず量、特徴、価額代金支払い方法(現金、口座振込など)金融機関、名義人、口座番号など (2度目以降の取引かつその者の口座に振込み) | 取引記録取引年月日金属くずの品目、数量、特徴本人特定事項(住所、氏名、年齢、職業) (既に帳簿の記載がある場合、かつ、住所等に変更がない場合、氏名の記載のみで可)相手確認方法 (売却時)払出日相手方氏名、住所 | |
| 表示義務 | 施行規則の様式はないが、表示義務あり (注意)届出公安委員会名、届出番号、氏名又は名称、営業所名称 (注意)ウェブサイト上の表示義務有(常時使用する従業者数が5人以下、ウェブサイトを有しない場合は除く) | 施行規則の様式あり(縦8センチメートル、横16センチメートル) (注意)公安委員会、許可番号、金属くず商、氏名又は名称 | |
| 警察官への申告 | 盗難特定金属製物品に由来する疑いがある時 | 不正品(注意)の疑いがある場合 (注意)犯罪構成要件に該当する行為により習得されたものをいい、盗品等より広い概念 | |
| 法と条例が 重複する場合 における対応 (注意)特定金属 くず(いわゆる 「銅」くず)を 買受ける場合、 法と条例双方の 規定が適用 | 届出と許可の関係 いわゆる「銅」くずを買受ける場合、法の届出及び条例の許可がなければ、法「無届営業」、条例「無許可営業」となる 表示義務 双方の表示義務が発生(更に、法はウェブサイト上の表示義務もあり) 相手確認 原則、法の相手確認方法を優先(ただし「職業」も追加で確認する必要がある) 法の相手確認方法は条例より厳格であるため、法の相手確認の際、「職業」も確認することにより、法と条例の相手確認義務を果たしたこととなる 相手確認記録・取引記録 原則、法の「記録」を優先(一部、条例の要件を追記) 本来、法の相手確認記録、取引記録に加え、条例の帳簿記載義務が発生するところ、 ・相手方又は取引担当者の本人特定事項を記載する際、法の相手確認記録等に「職業」を追記 ・法の取引記録等において、売却時「払出日時、売却の相手方氏名、住所」を追記 することで、条例の帳簿作成義務も果たしたことになるため、別途条例の帳簿を作成する必要がなくなる (法の記録保存期間は3年、条例の保存期間1年より長い) 警察官への申告 条例を優先 何らかの犯罪により領得された疑いのある場合は警察官に申告 | ||
■ まとめ:今すぐ確認すべきチェックリスト
最後に、対応状況を確認するためのチェックリストをまとめます。
□ 銅を主とする金属くずを「業として」買い受けているか確認した
□ 既存業者として令和8年8月31日までに届出を行う予定が立っている
□ 届出に必要な書類(住民票・登記事項証明書・平面図等)の準備を始めた
□ 買受け時の本人確認・記録作成の社内運用を整備した
□ 営業所の見やすい場所に届出番号等を表示した(ウェブサイトも)
□ 大阪府金属くず営業条例の許可も取得済みか確認した
□ 条例帳簿の運用に「職業」「売却記録」の追記を加えた
ひとつでも「まだ」という項目があれば、早急な対応が必要です。
■ 手続きでお困りの方はご相談ください
特定金属くず買受業の届出は、必要書類の準備から警察署への提出まで、慣れていないと時間と手間がかかります。アドバンスリンク行政書士事務所では、書類の作成から届出の代行までワンストップでサポートいたします。
「何から手をつければよいかわからない」「他の業務と並行して対応する余裕がない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
【お問い合わせ先】 アドバンスリンク行政書士事務所 受付時間:平日 9:00〜18:00
本記事は令和8年6月1日時点の大阪府警察発表情報をもとに作成しています。最新情報は所轄警察署または大阪府警察本部 保安課(06-6943-1234)にご確認ください。

