【エステ・学習塾・語学教室の事業者必見!】特定商取引法「概要書面」「契約書面」の作り方を行政書士が解説【記載不備は罰則対象】

■ はじめに

エステティックサロン、美容医療クリニック、語学教室、家庭教師派遣、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス——これらの事業を運営されている方、またはこれから開業を検討されている方は、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」という規制を必ず押さえておく必要があります。

特定継続的役務提供に該当する契約を締結する際、事業者には「概要書面」と「契約書面」という2種類の法定書面を、決められたタイミングで消費者に交付する義務が課されています。この書面には記載しなければならない事項が法律で細かく定められており、記載内容に不備があると、行政処分(業務改善指示、業務停止命令など)や罰則の対象になるおそれがあります。さらに、書面交付義務を正しく果たしていないと、クーリング・オフの起算日が進行しないというリスクもあります。

「うちの契約書、このままで大丈夫だろうか」「概要書面と契約書面の違いがよくわからない」——そんな疑問をお持ちの事業者様に向けて、本記事では特定商取引法における概要書面・契約書面のルールを、行政書士の視点からわかりやすく整理してご説明します。

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■ 特定継続的役務提供とは

特定継続的役務提供とは、長期・継続的に役務(サービス)を提供し、これに対して高額の対価を約する取引のことを指します。特定商取引法および関連政令により、現在、以下の7つの役務が対象として指定されています。

【対象となる7つの役務と要件】

・エステティック:契約期間が1か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・美容医療:契約期間が1か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・語学教室:契約期間が2か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・家庭教師:契約期間が2か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・学習塾:契約期間が2か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・パソコン教室:契約期間が2か月を超え、対価が5万円を超えるもの
・結婚相手紹介サービス:契約期間が2か月を超え、対価が5万円を超えるもの

ポイントは、入学金・受講料・教材費・関連商品の販売代金などを合算した契約金の総額が5万円を超えるかどうかで判定される点です。月謝が安くても、教材費等を含めたトータルの契約額が基準を超えれば、特定継続的役務提供の規制対象となります。

なお、営業のために締結する契約(事業者間取引)や、国・地方公共団体が行う役務提供などは適用除外とされています。

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■ なぜ「概要書面」と「契約書面」の2種類が必要なのか

特定商取引法第42条は、特定継続的役務提供を行う事業者に対して、契約締結までと契約締結時の「2回」、それぞれ異なるタイミングで法定書面を交付することを義務付けています。

なぜ2段階に分かれているのでしょうか。それは、消費者が「契約するかどうかを判断する段階」と「実際に契約を締結した後に内容を確認する段階」とでは、必要な情報提供のタイミングが異なるためです。

・概要書面 → 消費者が契約を締結するかどうかを判断するための情報提供
・契約書面 → 実際に締結した契約の内容を、消費者が後から確認できるようにするための情報提供

この2段階の書面交付を怠ったり、記載内容に不備があったりすると、後述するとおり重大なリスクにつながります。

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■ 概要書面のルールと記載事項

概要書面は、契約を締結する「までの間」、つまり契約成立前に消費者へ交付しなければならない書面です。具体的には、契約のために来店した消費者に対して、役務内容等の説明とあわせて交付することが想定されています。

【概要書面の記載事項】

法律上、概要書面には以下の事項を記載することが定められています。

  1. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号(法人の場合は代表者の氏名も)
  2. 役務の内容
  3. 購入が必要な商品がある場合には、その商品名・種類・数量
  4. 役務の対価(権利の販売価格)その他支払うべき金銭の概算額
  5. 上記金銭の支払時期・支払方法
  6. 役務の提供期間
  7. クーリング・オフに関する事項
  8. 中途解約に関する事項
  9. 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  10. 前受金の保全に関する事項
  11. 特約があるときは、その内容

【概要書面作成のポイント】
概要書面の役割は、消費者が「契約してよいかどうか」を判断するための材料を提供することにあります。そのため、料金は「概算額」で足りるとされていますが、実際の契約内容と大きく乖離した金額を記載すると、誇大広告等の禁止規定(特定商取引法第43条)に抵触するおそれがあるため注意が必要です。

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■ 契約書面のルールと記載事項

契約書面は、契約を締結した「後」、遅滞なく交付しなければならない書面です。「遅滞なく」とされていますが、特段の事情がない限り、契約締結のその場で交付することが求められています。後日郵送する、といった対応は原則として認められません。

【契約書面の記載事項】

契約書面には、概要書面よりも詳細な事項を記載することが義務付けられています。

  1. 役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
  2. 役務の対価(権利の販売価格)その他支払うべき金銭の額
  3. 上記金銭の支払時期・支払方法
  4. 役務の提供期間
  5. クーリング・オフに関する事項
  6. 中途解約に関する事項
  7. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号(法人の場合は代表者の氏名も)
  8. 契約の締結を担当した者の氏名
  9. 契約の締結年月日
  10. 購入が必要な商品がある場合には、その種類・数量
  11. 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  12. 前受金の保全措置の有無・その内容
  13. 購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号(法人の場合は代表者の氏名も)
  14. 特約があるときは、その内容

概要書面と比較すると、契約書面には「契約締結の担当者氏名」「契約締結年月日」「対価の確定額」など、実際に成立した契約に関する具体的事項が追加されている点が大きな違いです。

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■ 書面の様式に関する形式的ルール

概要書面・契約書面はいずれも、記載事項を満たしていれば良いというわけではなく、消費者に内容をきちんと認識してもらうための「形式面」のルールも法律で定められています。

【1】赤枠・赤字によるルール
消費者に対する注意喚起として「書面をよく読むべきこと」を赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、契約書面においては、クーリング・オフに関する事項についても赤枠の中に赤字で記載することが義務付けられています。

【2】文字の大きさのルール
書面に記載する文字・数字の大きさは、8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。小さな文字で詰め込んだ書式は法令違反となるおそれがあります。

【3】書面の交付方法
書面は紙での交付が原則ですが、令和3年改正によって、消費者の承諾を得た場合には電磁的方法(PDFファイルの送付、専用画面での表示など)による提供も可能となりました。ただし、電磁的方法による提供には消費者の明示的な承諾取得や、一定の技術的要件を満たすことが求められるため、安易な運用は避け、慎重に制度設計を行う必要があります。

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■ 書面に不備があった場合のリスク

概要書面・契約書面の記載に不備があったり、交付すべきタイミングで交付しなかったりした場合、事業者には次のようなリスクが生じます。

【1】行政処分の対象になる
書面交付義務(特定商取引法第42条)に違反した場合、消費者庁・経済産業局等から業務改善の指示(第46条)、業務停止命令(第47条)、役員等に対する業務禁止命令(第47条の2)といった行政処分を受ける可能性があります。

【2】罰則の対象になる
行政規制への違反は、一部、罰則(懲役・罰金)の対象ともなり得ます。

【3】クーリング・オフの起算日が進行しない
特定継続的役務提供のクーリング・オフ期間は「法律で定められた書面を受け取った日」から8日間とされています。つまり、法定の記載事項を満たさない不備のある書面を交付した場合、消費者からみればクーリング・オフ期間がいつまでも開始しないことになり、契約締結からかなりの期間が経過した後でも、消費者からクーリング・オフを主張されるリスクが残り続けます。これは事業者にとって非常に大きな経営リスクとなります。

【4】誇大広告等の禁止規定との抵触
概要書面・契約書面の記載内容が実態と著しく異なる場合、誇大広告等の禁止(特定商取引法第43条)や、不実告知・故意の事実不告知等の禁止行為(同法第44条)にも抵触するおそれがあります。

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■ 概要書面・契約書面を作成する際の注意点

最後に、実務上、書面を作成・運用する際に押さえておきたいポイントをまとめます。

【1】業種ごとのひな形をそのまま使わない
インターネット上には特定継続的役務提供の書面ひな形が多数公開されていますが、自社の役務内容、料金体系、中途解約条件等に合わせてカスタマイズしなければ、かえって記載漏れや実態との齟齬が生じることがあります。

【2】中途解約の損害賠償額の上限を正しく記載する
特定商取引法では、中途解約時に事業者が請求できる損害賠償等の上限額が役務ごとに政令で定められています(例:エステティックは役務提供開始前は2万円、開始後は2万円または契約残額の10%のいずれか低い額など)。契約書面に記載する中途解約条項がこの上限を超えていると、その特約自体が無効と判断されるリスクがあります。

【3】関連商品の取扱いに注意する
エステティックにおける健康食品・化粧品、語学教室における教材・CD等、業種ごとに「関連商品」として政令で指定された商品があります。関連商品を販売する場合は、契約書面にその商品名・数量・販売業者の情報まで記載する必要があり、記載漏れが生じやすいポイントです。

【4】前受金の保全措置の有無を明記する
前払い方式で5万円を超える契約を結ぶ事業者は、前受金の保全に関する事項を書面に記載する必要があります。また、前払い方式の事業者には、消費者の求めに応じて財務書類(貸借対照表・損益計算書等)を閲覧させる義務も別途課されています。

【5】電子交付を導入する場合は要件を満たしているか確認する
電磁的方法による書面提供を行う場合、消費者からの承諾取得方法やデータの保存・出力可能性など、満たすべき要件が細かく定められています。自己流で運用するのではなく、専門家に確認を取りながら導入することをおすすめします。

【6】定期的な見直しを行う
特定商取引法は近年改正が重ねられており、令和3年改正では電子交付に関するルールが整理されたほか、2026年現在もダークパターン規制やサブスクリプション契約の解約妨害対策など、デジタル時代に対応した見直しの議論が進められています。一度作成した書面をそのまま使い続けるのではなく、定期的に最新の法令・ガイドラインと照らし合わせて見直すことが重要です。

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■ まとめ

特定継続的役務提供に該当する事業(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)を営む事業者は、契約締結前の「概要書面」と契約締結後の「契約書面」という2種類の法定書面を、定められた記載事項・形式(赤枠赤字、8ポイント以上の文字サイズ等)に従って正しく交付する義務があります。

この義務を怠ると、行政処分や罰則の対象となるだけでなく、クーリング・オフ期間が進行しないという形で長期的な経営リスクを抱え続けることにもなりかねません。一方で、適切に整備された書面は、消費者とのトラブルを未然に防ぎ、事業の信頼性を高めることにもつながります。

「自社の契約書が法律の要件を満たしているか確認したい」「これから新しいサービスを立ち上げるにあたって書面を一から整備したい」とお考えの事業者様は、ぜひ専門家にご相談ください。

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■ お問い合わせ・ご相談

アドバンスリンク行政書士事務所では、特定商取引法に基づく概要書面・契約書面の作成・リーガルチェック、特定継続的役務提供に関する各種法令対応のご相談を承っております。

「現在使用している契約書に不備がないか確認したい」「新規事業の立ち上げにあたって法定書面を一式整備したい」「クーリング・オフや中途解約の条項について相談したい」など、業種・規模を問わずお気軽にお問い合わせください。経験豊富な行政書士が、貴社の事業内容に即した書面作成をサポートいたします。

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